秀808の平凡日誌

第6話 密接

第6話 密接



 キャロルを追いかけていたラムサスは、さっきまでヴァン達がいた場所のあたりで起こった大爆発に息を呑んだ。

「なんだ、あの爆発は・・・!」

 余所見をしていると、すぐにはなれた位置から矢が飛んでくる。

 他のことを気にしていては、自分がやられてしまう。

(あいつらのことだ・・・無事でいろ!)

 そう心に決め付け、さっきよりも早いスピードで、キャロルに狭る。

 やがて2人は、『ウルフ』の巣があるゴツゴツした岩肌の崖に出た。

 そこについたところで、キャロルは逃走をやめ、本格的な攻撃をしかけてきた。

 弓から、すさまじい速さで『マシーンアロー』が放たれたが、ラムサスは、それらの矢を『フレイムストーム』で焼き払う。

 炎の射線はキャロルを捉えていたが、それを横にステップして何なくかわす。

 かわすと同時に『ランドマーカー』が放たれ、地面に突き刺さった矢は爆発し、火花を散らした。

 燃え盛る炎が『ドラゴンスキンアーマー』を焼いたが、火属性に対する抵抗の魔法がかかっているため、あまり効果はなかった。

 ラムサスはそれらの炎を『ウォーターキャノン』でまとめて消火する。

 戦況は、ほぼ互角だった。


 
 ロレッタ達に『メテオシャワー』を撃ちこんだ後、

 この戦いを客観的に見ていたファントムだったが、こんなことをつぶやく。

「・・・今ならあのウィザードも、『メテオシャワー』で始末できる・・・」

 確かに、今ラムサスはキャロルとの戦闘に必死で、隙を突いてとどめを刺すことなど簡単だろう。

 だがそうすれば、キャロルを巻き込みかねない。

「・・・キャロルを失えば、色々とめんどうなことになるな・・・」

 だが、次の一言が彼にその迷いを断ち切らせた。

「・・・だが、ここで障害を残すわけにもいかん・・・・・・俺のために、そして世界のために散れ、キャロル」

 ファントムは、この一撃でこの後にもたらす利益を想像し、どこか幻想的な、そして悪魔的な笑みを浮かべながら、『メテオシャワー』の唱昌をはじめた・・・



 キャロルとの距離を縮めたラムサスは、一気に倒そうと杖に『チリングタッチ』の冷気を込める。

 だが、その一撃を放つ前に、彼は『殺気』を感じ、空を見上げる。

 天から矢のようにこちらに落ちてくる物体・・・まちがいなくファントムの放った『メテオシャワー』であった。

「何・・・!このアーチャーも巻き込むぞ!?・・・チッ!」

 ラムサスは咄嗟に近くにいたキャロルを引き寄せると、ウルフの巣穴に飛び込んだ。

 その直後、外ですさまじい爆発と閃光が巻き起こる。

 巣穴の入り口の岩が崩れ、巣穴に閉じ込められた。



 しばらくじっとしていたラムサスは、さっき向けられていた殺気が無くなったのを感じたあと、体の各所からなる痛みに悩まされていた。

「ッ!・・・飛び込むなんて無茶な芸当、やらなきゃよかったか・・・?」

 ・・・まぁ、飛び込まなければ死んでいた。というのも事実だが。

 ラムサスは、隣りで気を失っているキャロルの顔を見、つぶやいた。

「・・・気を失っているのか・・・それにしても・・・」

(・・・結構、可愛いじゃん)

 などと思いながら、キャロルを見ていると、「う・・・」という呟きと共にキャロルが目を覚ました。

 そんな彼女を気遣い、ラムサスが声をかけた・・・が。

「・・・目を覚ましたか、怪我とかは大丈・・・!」

 こちらを見るや、いきなり腰にさしていた短刀を首に突きつけられたのだ。

 ラムサスは、殺されると思っているであろうキャロルに、言葉を続けた。

「ま、まて!話せばわかる!ご覧の通り俺は武器を離してるし、こんな閉じ込められた状況で君を殺す気なんてさらさらない!」

 しかしこちらを信用していないのか、突きつけられた短刀を離そうともしない。

 逆に近づけてくる様だった。

「・・・信用してくれよ!」

 ラムサスが冷や汗を掻きながら必死に話していると、初めてキャロルが声をかけてきた。

「・・・なんで私とお前がここに閉じ込められている?」

 ラムサスは正直に話す。

「えっと・・・さっき戦ってただろ?その時に『メテオシャワー』がこっちに落ちてくるのが見えたから、咄嗟に引き寄せて・・・今の状況なんだ。」

「なら、なんで私を助けた?敵だろう?」

 ラムサスは(男勝りな女の子だな)などと思いながら、理由を述べる。

「いや、自分1人助かるってのもなんだからな・・・それに、敵でも助けられるんなら助けておきたいし」

 キャロルは少し考えるようなしぐさをした後、向けていた短刀を離した。

「・・・わかった。信用する。お前、名前は?」

「俺はラムサス・ブレンディルだ。君は?」

「・・・キャロル。」

「こんな状況だし、名前で呼んでいいか?」

 キャロルは(調子にのるな)というような視線をラムサスに向ける。

 その意味を感じたラムサスは

「すみません。あなた様」

 とはっきり言った。

 面白かったのか、キャロルが「プッ」と小さく噴出した。

「・・・君、面白い奴だね。」

 名前で呼んでほしかった、などと思いながらもラムサスは言葉を返す。

「ははは・・・ま、それはいいとして・・・」

 表情を変え、重苦しい表情で言葉を続ける。

「・・・どうやって出る?」



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